【超入門】第五回:グローバル社会を生き抜くための世界一平たい経営学~マーケティングとは?~STP編

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世界は恐ろしい速度で変化し、グローバル化の波は広がり続けています。
日本は高度成長期後のバブル崩壊から、失われた30年と呼ばれる経済停滞の状況が続いています。
更に人口減少からの超高齢化社会が進み、今後の日本経済の先行きを不安視する声が多い状況です。

人生100年時代と言われる昨今、終身雇用制は終わりを迎え、副業や週末起業など、自身のスキルや強みを活かして収入の柱を増やそうと努力されている方も多いと思います。
また、日本の市場や経済が今後も停滞が予測される中、私たち日本人も、個人や企業として海外進出や、海外に市場を開拓する必要性がますます増しています。

ではこのような状況下で、どのような知識やスキルを身につければよいのか?
その答えは英語、論理的思考、そして今回のブログテーマである経営学です。

世界の約17億人が使用する英語を習得することで、確実に世界が広がります。
私も思春期を超絶英語嫌いで過ごし、社会人になってから英語を学んだことで、海外勤務や移住など、人生が大きく変わりました。

論理的思考は、私たちの人生の羅針盤の役割を果たします。
高度成長時代とは違い、現代は答えのない世界です。
答えのない世界から、自身で考え、答えを導いてくれる思考法が論理的思考です。
私も米国での状況のつかめない環境下で、公私ともに論理的思考は多くの課題解決のヒントを与えてくれました。

そして最後の経営学は、ビジネスにおいてのレシピの役割を果たしてくれます。
経営学は過去の英知が詰まった総合科学です。

共通言語である経営学を学ぶことで、副業の運営や起業、海外で働くことになっても、その共通言語でビジネスをすることが可能になります。
経営学を知らずにビジネスをおこなう事は、料理のレシピを知らずに料理をすることと同じなのです。

まさに英語、論理的思考、経営学は、先行き不透明な日本の状況下で、グローバル社会を生き抜くための必須スキル・知識だと言えます。

経営学ってなんだか難しそう・・・と不安を持たれている方も多いと思います。

今回は経営学の概要が理解できるように、経営資源と言われるヒトモノカネを、組織戦略/組織論(ヒト)、戦略/マーケティング(モノ)、カネ(会計/財務)に分け、現代に必要不可欠な論理的思考も併せて全8回に分けて、食産業で管理職15年、海外法人代表5年を経験し、社会人になって経営学を学び直した著者が、知識と実務経験に基づいて経営学を世界一平たくご紹介させて頂きます。

第一回では経営学の概要について、第二回では組織戦略/組織論、第三回では戦略、第四回ではマーケティングの概要についてご説明させて頂きました。
本ブログ第五回では、マーケティングのSTPについてご紹介させて頂きます。
STPとは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの英語の頭文字をとったもので、マーケティングプロセスに含まれているものです。
このブログを10分、15分お読み頂くだけで、新しい商品やサービスを考えたいんだけど、どうやって考えればいいんだろう?や新しく事業を起業したいんだけど、どうすればより多くの売上や利益を得ることができるんだろう?など、ビジネスチャンスを発見する方法の理解に繋がりますので、最後までお読み頂けると幸いです。

目次

結論

マーケティングとは平たく言うと、お客様が必要としている商品やサービスを提供し、その対価としてお金を頂く仕組みをつくる事です。

戦略やマーケティングなど、ビジネスをする中で必ず一度は聞いたことがあるワードだと思います。
言葉は聞いたことがあるし、何となく意味は分かっているけど、結局どういう事なんだろう?や、飲食店や小売店運営、副業や企業経営にどう活かせばいいんだろう?平たく言うと単純そうだけど、そんな単純なことなの?などと思われている方もいらっしゃると思います。

確かに戦略もマーケティングも、学問としてはとても奥が深く、難解な部分もあります。
しかしながら、戦略やマーケティングを大枠で概要を捉え、私たちのビジネスに活用することはできます。
というのも、何かしら飲食店や小売店運営、副業や企業経営をしている時点で、何かしらの戦略やマーケティングプロセスを経てそのビジネスが既に形成されているからです。
その背景やプロセスを理解することで、より既存のビジネスを成長させるアイディアが戦略やマーケティングが詰まっていますので、大枠を理解し、ビジネスに活用できるようにしていきましょう!
それでは第五回では、マーケティングを具体的におこなうためのマーケティングプロセスの中からSTPについて紐解いていきましょう。

  • マーケティングとは平たく言うと、お客様が必要としている商品やサービスを提供し、その対価としてお金を頂く仕組みをつくる事です。

戦略とマーケティングの関係性

戦略とは?

マーケティングと、第三回でご紹介させて頂いた戦略は深く関わり合いがあります。
船の航海でいうと、戦略が船の航路や方向性を決めることで、マーケティングはその航路や方向性を具体的に実行する方法を考えるイメージです。
マーケティングプロセスをご説明する前に、ざっくりと戦略について振り返っておきましょう!

戦略を平たく言うと、自社の強みを活かし、市場で差別化(競争優位)になるよう経営資源を分配し、継続して利益を上げる方法を考える事です。

マーケティングプロセスとは?

マーケティングプロセスの図

戦略を振り返る前に、先にマーケティングプロセスの全体像を見てみましょう。
マーケティングと戦略のつながりが理解しやすくなります。
繰り返しになりますが、マーケティングとは、戦略立案で定めた方向性に沿ってお客様が必要としている商品やサービスを提供し、その対価としてお金を頂く仕組みをつくる事です。
戦略とは、自社の強みを活かし、市場で差別化(競争優位)になるよう経営資源を分配し、継続して利益を上げる方法を考える事でした。
※詳しくは第3回の戦略をお読みください

平たくマーケティングプロセスをご説明すると、まず初めに自社の強みを明らかにし、市場と競合の状況を把握した上で強みを活かせる市場の機会(顧客のニーズ)を探します。
この部分が先の戦略にあたります。
戦略立案が完了したら、戦略立案の方向性に沿って戦術のプロセスを考えます。
市場のニーズ(顧客のニーズ)を細分化し、競合よりも自社の強みが差別化になるポイントを定めます。
最後は、特定の顧客とニーズに合わせ、自社の差別化に繋がる強みを活かした商品やサービス、価格、販売先、プロモーション方法を考えることがマーケティングプロセスの全体像です。

それでは戦略とマーケティングの関係性の理解を深めたところで、STPの説明の前に、マーケティングプロセスのステップ1の環境分析について見ていきましょう!

環境分析とは?


戦略は船の航路や方向性を決めることで、マーケティングプロセスではステップ1の環境分析にあたります。
この環境分析にあたる戦略については第三回で説明させて頂いておりますが、環境分析の一例は以下の通りです。
何故一例なのかというと、環境分析をおこなうために、経営学では様々なフレームワークが存在します。
今回はその一例として、3C分析をご紹介します。

3Cとは、Company(自社)、Customer(市場)、Competitor(競合)の頭文字を表しています。
経営学では、この3C分析以外にも、市場環境や競合環境、自社環境を把握するために特化したフレームワークも数多く存在しますが、最終的には3C分析のフレームワークなどで情報を集約し、戦略などの打ち手の方向性を考えるために活用します。
また、情報を集約し、戦略の打ち手を考えるフレームワークには、有名なSWOT分析などもあります。

3C分析の図

3C分析のフレームワーク

自社環境(Company)を知る(ミッション、商品力、商品開発力、ブランド力、人的金銭的資本力など)

市場環境(Customer)を知る(市場規模、市場成長性、ニーズ、ターゲットなど)

競合環境(Competitor)を知る(競合の強みや弱み、競合の業績、競合のシェアなど)

また、戦略において差別化(競争優位)につなげるためにはポータの競争戦略と言われる3つの基本戦略があります。

❶コストリーダーシップ戦略
自社の商品サービスなどの価格を、市場や競合よりも安価に設定し、競争優位(差別化)を得る戦略です。
但し、商品サービスの原価やコストを削減する事も併せて行うことができなければ、単なる薄利多売となってしまい、競争優位(差別化)にはつながりません。

❷差別化戦略

自社の商品サービスなどを、市場や競合よりもお客様に特異性(付加価値)を認知してもらい、市場や競合よりも支持者の商品サービスなどを高価格帯に設定し、競争優位(差別化)を得る戦略です。
但し、その特異性(付加価値)を担保するための商品サービスの機能性や特徴、ブランド力が必ず必要となります。
これら特異性(付加価値)を担保できなければ、単に高いだけの商品サービスとなり、競争優位(差別化)にはつながりません。

❸集中戦略

❶や❷の戦略の特性を活かしつつ、ニッチ市場や特定のターゲットに限られた経営資源分配を絞りこんで競争優位(差別化)を得る戦略です。
実は3つの基本戦略を提唱したポーター自身も、後年の論文においては集中戦略には触れていません。
何故ならば戦略において、限られた経営資源分配を、特定の領域に集中させることは戦略の基本だからです。
昨今ではブルーオーシャン戦略などがこのタイプの戦略にあたりますが、規模の小さな経営資源でも、自社の強みとニッチ市場や特定のターゲットのニーズが合えば高い効果が得られる戦略です。
但し、絞り込みによって市場やニーズの規模が小さい事と、常にこれらが変化する可能性もあるため、環境変化に対応できなければ、競争優位(差別化)にはつながりません。

つまり環境分析とは、競合や市場の状況を把握し、どの市場でどのように自社の強みを活用することが差別化に繋がるかを考える事です。

それではマーケティングプロセスのステップ1、環境分析について理解を深めたところで、ステップ2のセグメンテーションについて紐解いていきましょう!

スターバックスの戦略とは?

より具体的に戦略や環境分析を理解するために、スターバックスを例にとって掘り下げてみましょう。

まず、スターバックスの経営方針(ミッション)は、「人々の心を豊かで活力あるものにするために—ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」です。
引用元:スターバックス公式HP
また、スターバックスの基本戦略は高品質なコーヒーとサードプレイスの提供です。
ポータの競争戦略論では差別化戦略にあたります。
ちなみにサードプレイスとは、自宅などのファーストプレイス、学校や職場などのセカンドプレイスに続く、自宅や職場、学校とは違う場所で、コーヒーと共に寛ぎの空間をサードプレイスとして提供し、お客様とのコミュニティを形成するということが差別化ポイントとなっています。

スターバックスは1995年に日本に初上陸し、3年後には100店舗、現在では約1,700店舗を展開しています。
それでは、スターバックスが日本に上陸したころの環境分析を、3C分析に当てはめて見てみましょう。

スターバックス日本上陸時の3C分析(環境分析)

自社環境(Company)を知る(ミッション、商品力、商品開発力、ブランド力、人的金銭的資本力など)
 ・高品質なコーヒー
 ・高級感のある店内
 ・高いホスピタリティ

市場環境(Customer)を知る(市場規模、市場成長性、ニーズ、ターゲットなど)
 ・喫茶店は減少傾向だが、セルフ型のチェーン店は増加傾向にあった
 ・コーヒーの需要、質にこだわる顧客が増加傾向にあった
 ・カフェを仕事や作業する場として利用するニーズが高まりつつあった

競合環境(Competitor)を知る(競合の強みや弱み、競合の業績、競合のシェアなど)
 ・安価でコーヒーが飲める
 ・利用しやすい庶民的な内装
 ・喫茶店ではサラリーマンがコーヒーとたばこで一息つく場所
 ※競合:喫茶店、ドトール、ファミリーレストランなど

差別化戦略:スターバックスのミッションに沿って、高価格帯であっても、高品質なコーヒーと、高級感のある寛ぎの場(サードプレイス)を提供することで、競争優位性(差別化)を得ることができるのでないか?

ざっくりとした分析となりますが、3C分析のフレームワークを活用した環境分析の方法についてのイメージがし易くなったのではないでしょうか?
それでは引き継続き、スターバックスをマーケティングプロセスの例に挙げながら、次に本題のSTPの中から、ステップ2のセグメンテーションについてご紹介致します。

セグメンテーション

セグメンテーションとは?

セグメンテーションとは、環境分析で、戦略の方向性を定め、その定めた市場を分類し、更に自社の強みが活かせる市場を絞り込むことです。
このプロセスをセグメンテーションと呼び、後のポジショニングとターゲティングと合わせ、頭文字をとってSTPと呼ばれています。
セグメンテーションのイメージを図にすると以下の通りです。

セグメンテーションの図

地理的変数など聞きなれない言葉が並んでいると思いますが、先ほどのスターバックスを例にとって、
実際に戦略で定めた市場を実際に絞り込んでみましょう。

ステップ1の3C分析を活用した環境分析から得られた戦略の方向性は、
差別化戦略:スターバックスのミッションに沿って、高価格帯であっても、高品質なコーヒーと、高級感のある寛ぎの場(サードプレイス)を提供することで、競争優位性(差別化)を得ることができるのでないか?
でした。

セグメンテーションを考える前に、当時スターバックスが日本に上陸した際の日本の状況を簡単に触れておきましょう。
スターバックスの第一号店は1996年東京の銀座で、スターバックス海外1号店でした。
1996年の日本は、91年に崩壊したバブルから徐々に経済が回復しているものの、当時は失われた10年と言われ厳しい状況が続いていました。
日本の総人口は当時やや上昇傾向にあり、世の中的にはインターネットの普及初期段階で、あのスティーブ・ジョブズが解雇になったアップルに復帰した年でもあります。
私たちの生活に欠かせない携帯電話はネットで検索できる機能などはなく、簡単なテキストのやり取りや、
好きな着信音が設定できる「着メロ」などが誕生したころで、携帯普及率も20%程でした。
ちなみに喫茶店などのコーヒー市場は、82年に市場のピークを迎え、その後減少傾向にあり、前途の通り、従来の喫茶店と言われる業態は苦戦を強いられており、セルフ型のチェーン店が増加し始めた頃になります。

ではこのような当時の状況を踏まえ、スターバックスの戦略を活かせる市場をセグメンテーションで絞り込んでいきましょう。

スターバックスのセグメンテーション

・地理的変数:地方、気候、人口密度、都市化の進展度、政府による規制、文化、顧客の行動範囲など
 →大都市で人通りの多いエリア
・人口統計変数:年齢、性別、家族構成、家庭のライフサイクル、所得水準、職業、学歴、宗教、人種、国籍など
 →平均よりも収入がある会社員
・心理的変数:ライフスタイル、パーソナリティー、社会的階層、価値観、購買動機など
 →価格よりも美味しいコーヒーで寛げる、または仕事や作業できる場所が欲しい
・行動的変数:過去の購買状況、使用頻度、求めるベネフィット、購買パターン、返品に対する態度など
 →カフェをよく利用するヘビーユーザー

いかがでしょうか?ステップ1で定めた戦略の方向性に沿って、セグメンテーションをおこなう事でより市場が明確になったのではないでしょうか?
セグメンテーションから絞り込んだ市場の情報をまとめると、「大都市で人通りの多いエリアの、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、価格よりも質と寛げる場所を求めている会社員」が次のターゲットを絞り込むための市場となりそうです。

それでは上記の市場を絞り込んだところで、マーケティングプロセスのステップ3にあたる、ターゲティングについて考えてましょう!

ターゲティングとは?

ターゲティングという言葉は耳にしたことがあると思います。
マーケティングプロセスにおけるターゲティングとは、セグメンテーションで絞り込んだ市場を、本当にターゲットセグメント(顧客)にしてビジネスが成立するのか評価をし、対象顧客を絞り込むことです。

ターゲティングする際には、以下の図の6つの視点からセグメンテーションで絞った市場を評価します。
この6つの視点は、それぞれを英語にした時の頭文字をとって6Rと呼ばれています。

以下の図でターゲティングのイメージをつかみつつ、実際にスターバックスの例を用いてターゲティングと、ターゲットセグメント(顧客)を絞り込んでみましょう!

ターゲティングの図

 セグメンテーションの結果
 大都市で人通りの多いエリアの、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、価格よりも質と寛げる場所を求めている会社員

 ターゲティング

 ・有効な市場規模:ビジネスが成立する市場規模はあるか?
  →82年に市場はピークアウトしているものの、人口ややや上昇傾向にあり、市場規模も1.5兆円と十分な規模

 ・成長性:市場の成長は見込めるか?
  →喫茶店業態は減少しているが、セルフ型のチェーン店は増加傾向にあり成長が見込める

 ・顧客の優先順位/波及効果:情報の影響力や拡散力はあるか?
  →大都市の平均年収以上の会社員の情報に対する感度は高い

 ・到達可能性:顧客にアプローチできないなど地理的課題はないか?
  →大都市に展開することで確実にターゲット層にリーチでき、口コミも期待できる

 ・競合状況:既にその市場やターゲットで競合が大きなシェアを占めていないか?
  →コーヒー市場に競合は多いが、自社のターゲットと差別化ポイントでの競合はない

 ・反応の測定可能性:マーケティングを実行した結果が検証できるか?
  →売上や客数、またアンケートの実施などでマーケティング結果の検証が可能

 ターゲティングの結果
 →世帯収入が高く、オフィス街でもある銀座に出店することで、セグメンテーションで絞った市場の中から、
  ターゲットセグメントが獲得できるのではないか?

 ターゲットセグメント
 東京の銀座付近に勤務し、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、
 価格よりも質と寛げる場所を求めている男性会社員

セグメンテーションで絞った市場を、6つの視点、6Rで評価したところ、その市場は有望であり、第一号店を銀座に出店することで、「東京の銀座付近に勤務し、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、価格よりも質と寛げる場所を求めている男性会社員」がターゲットセグメント(顧客)になるのではないか?という結果を得ることができました。

ステップ1の環境分析から戦略の方向性を定め、ステップ2のセグメンテーションで市場を絞り込み、ステップ3のターゲティングで、価値を提供するためのターゲットセグメント(顧客)が明確になりました。
さて、ここで「価値」という言葉が出てきました。
ステップ1の環境分析時に、戦略とは、自社の強みを活かし、市場で差別化(競争優位)になるよう経営資源を分配し、継続して利益を上げる方法を考える事とありました。
この差別化要因が「価値」の源泉となるわけですが、せっかく絞り込んだターゲットセグメント(顧客)に、この「価値」を認識してもらわなければ差別化に繋がらず、戦略における競争優位に繋がりません。

この提供価値とは何か?を考えるプロセスがステップ4のポジショニングにあたります。
それでは早速このポジショニングとは何か?について見ていきましょう!

ポジショニングとは?

提供価値を明確にするためのポジショニングでおこなう事は主に2つです。
一つはポジショニング宣誓書の作成、二つ目はポジショニングマップの作成です。
なんのこっちゃ?!ですが、これらを順に説明していきますね。

一つ目のポジショニング宣誓書の作成内容は以下の通りです。

ターゲットセグメント

❷顧客ニーズ

❸認識してもらいたい価値

ポジショニング宣誓書作成の役割は顧客への提供価値とは何か?を明確にする作業です。
❶のターゲットセグメントは、先のセグメンテーションとターゲティングで定めた「東京の銀座付近に勤務し、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、価格よりも質と寛げる場所を求めている男性会社員」がそれにあたります。

❷の顧客ニーズは、ステップ1の環境分析で集めた情報から、市場やターゲットセグメントにどのようなニーズがあるのかを明らかにします。

最後に❸の認識してもらいたい価値も、ステップ1の環境分析で集めた情報の中から、❶のターゲットセグメントと❷の顧客ニーズに対して、どのような提供価値を認識してもらいたいかを明確にします。

ポジショニング宣誓書を作成したら、次はポジショニングマップの作成です。
ポジショニングマップとは、直感的にポジショニング宣誓書の内容が、競合との差別化に繋がっているかを理解するためのものです。

ポジショニングマップ

それぞれの2軸には、例えばAとaの軸には高価×安価、Bとbの軸にはフォーマル×カジュアルなどをとり、自社や競合がどの価値提供の位置づけにいるかを図式化することで明確にすることができます。
ポジショニングは自社が競合との価値提供が被らないようにおこなうことが、戦略とマーケティングにおいての競争優位性(差別化)に繋がります。

ポジショニングの概要を理解したところで、スターバックスを例にとって、実際にポジショニング宣誓書とポジショニングがどのようになるのかを見ていきましょう!

スターバックスのポジショニング

さて、これまでの環境分析とセグメンテーション、ターゲティングを踏まえた上で、1996年のスターバックスが日本初上陸した頃の日本の背景を踏まえた上で、ポジショニング宣誓書を作成すると以下の通りとなります。

❶ターゲットセグメント
東京の銀座付近に勤務し、平均よりも収入が高く、普段から喫茶店などをよく利用する、価格よりも質と寛げる場所を求めている男性会社員

❷顧客ニーズ
価格よりも美味しいコーヒーで寛げる、または仕事や作業できる場所が欲しい

❸認識してもらいたい価値
高級感のある店内で、高いホスピタリティと、高品質なコーヒーでサードプレイスとして寛いでほしい

ポジショニング宣誓書を作成し、ターゲットセグメント(顧客)への提供価値を明確にしたところで、これらをポジショニングマップにすると以下の通りとなります。

スターバックスのポジショニングマップ

当時の日本の背景を加味し、マーケティングプロセスの環境分析、セグメンテーション、ターゲティングにポジショニングを、スターバックスを例にとってご説明してきました。
当時の日本では、喫茶店はサラリーマン中心に、タバコとコーヒーで一息つく場所としてのニーズを満たしていたことを考えると、1996年のスターバックスの銀座一号店のポジショニングが、いかに他の競合と差別化できていたかが見て取れると思います。

余談ですが、今となっては女性からの支持も得ているスターバックスですが、ターゲットセグメントを見て頂く通り、当時は「女性」はターゲットセグメントに含まれていなかったそうです。
銀座第一号店を皮切りに、予想していなかった女性のお客様の来店に当時ビジネスチャンスを感じ取り、店舗拡大共にターゲットセグメントに女性も含めたマーケティングをおこない、現在の1,700店舗にも及ぶ店舗数に成長したとの事です。

まさに、戦略の自社の強みを活かし、市場で差別化(競争優位)になるよう経営資源を分配し、継続して利益を上げる方法を考える事とマーケティングのお客様が必要としている商品やサービスを提供し、その対価としてお金を頂く仕組みをつくる事を事業を取り巻く環境に合わせて柔軟に対応してきたスターバックスは、戦略とマーケティングのお手本となる企業の一つだと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?第五回ではマーケティングプロセスの中から環境分析とSTP、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングについて、スターバックスの事例をもとにご紹介させて頂きました。
次回の4Pの説明の前に、今回のポイントを振り返っておきましょう!

まず初めに、戦略とマーケティング、またその関係性については以下の通りでした。

戦略とは、自社の強みを活かし、市場で差別化(競争優位)になるよう経営資源を分配し、継続して利益を上げる方法を考える事

マーケティングとは、お客様が必要としている商品やサービスを提供し、その対価としてお金を頂く仕組みをつくる事

船の航海でいうと、戦略が船の航路や方向性を決めることで、マーケティングはその航路や方向性を具体的に実行する方法を考えるイメージ

また、マーケティングプロセスは以下の通りです。

❶環境分析
自社環境、競合環境、市場環境を分析し、自社の強みが活かせる市場機会を探す
❷セグメンテーション
環境分析で定めた市場を絞り込む
❸ターゲティング
絞り込んだ市場を評価し、ターゲットセグメント(顧客)を明確にする
❹ポジショニング
ターゲットセグメント(顧客)への提供価値を明確にする
❺4P
ターゲティング、ポジショニングに沿って製品、価格、流通先、販促方法を設定する

スターバックスの事例のように、戦略とマーケティングの関係性をしっかりと理解した上で、マーケティングプロセスをおこなうと、どのような市場機会があり、自社の強みを活かしてどのような顧客ニーズに価値を提供すればよいのかが筋道を立てながら構築することができます。

第三回の戦略時もお伝えしましたが、どれだけ優れた経営理論で計画を立てても、最後は実行してみない限り成功するかはわかりません。
しかしながら、ビジネスをおこなう事には常にリスクが伴います。
限られた経営資源の中で、あてずっぽうではなく、あたり付けされた戦略やマーケティングをおこなうことが、ビジネスの成功確率を向上させることが非常に重要となってきます。
是非皆さんも、本日ご紹介したマーケティングプロセスを活用してみてください!

第6回では、マーケティングプロセスの最終段階、4Pについてご紹介させて頂きます。
そちらも是非お読み頂けると幸いです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
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